Italy

国土

30.1万平方キロメートル(日本の約5分の4)、人口は6,100万人の共和制の国。キリスト教・カトリック教会の治めるバチカン市国がイタリアの首都ローマの中にある。
少子高齢化が進み、1人の高齢者を2.9人で支える高齢社会である。イタリアの医療は、1978年より税金によってユニバーサルヘルスケアが施行されており、公営・民営の混合制度となっている。公営制度は Sarvizio Sanitario Nazionale と呼ばれる公費負担医療であり、保健省が方針を定め、地方自治体が運営している。

 

宗教・民族

ラテン系を中心に、ケルト系、ゲルマン系、ギリシャ系などの混成民族であるイタリア人が大半である。
キリスト教のカトリック教会が75.2%と最大で、残りの大半が無宗教または無神論者で、数%のムスリム、その他宗教が1%未満と推定される。

 

年表

※イタリアの生殖補助医療 関連年表

1984 初の体外受精児の誕生
1987 凍結受精卵を用いた出産、法王庁教理省「生命の始まりに関する教書(Donum Vitae)」
1994 62歳の女性が卵子提供により出産
1997 保健省省令(生殖技術の商品化禁止、クローン禁止)
2002 クローン技術を用いた代理出産が成功したと発表(アンティノーリ医師)
2004 補助生殖医療法案、下院で可決・成立(施行3月10日)40号法
2005 40号法の改正を求める国民投票実施(→無効となる) Italian Fertility Tourism Observatory が設立される
2009.05 憲法裁判所が40号法14条2・3項(胚の作成を3個までに制限)を違憲であると判決
2014.04 憲法裁判所により、40号法の第三者からの配偶子提供の禁止は違憲であると判決
2015.10 憲法裁判所により、胚の選択を禁じる13条の一部を廃止する判決

 

法律

補助生殖医療に関する法律(Norme in matera di procreazione medicalmente assistia 40/2004号法)が2004年に成立し、生殖補助医療は厳しく規制された。2005年に改正を求める国民投票が行われたが、不成立となった。40号法の内容は、第三者からの配偶子提供の禁止、胚の凍結禁止(1回の体外受精につき3個までの受精卵を作製することができ、全て子宮に移植しなければならない)、胚の遺棄は禁止、着床前診断は禁止、代理出産は禁止、となっている。このように、イタリアの生殖補助医療に関する規則は非常に厳しく、多くの人が国外で治療を受けている。

 

体外受精

40号法により、生殖補助医療の実施は著しく制約された。とくに、胚の凍結が禁止され、一回の体外受精で作成、移植できる胚の数は3個までとされたために、その都度採卵が必要となり、また、多胎妊娠となりやすく、女性の負担が大きい。この法律により体外受精の成功率は大きく低下した。

 

代理出産

40号法により、商業的な代理出産は禁止されている。利他的な代理出産を合法化しようという動きもある。

 

精子・卵子提供

40号法により配偶子提供が禁止されたが、2014年に禁止は違憲とされ、現在は容認されている。禁止後、海外へ渡航する患者が急増した。精子・卵子ドナーへは必要経費のみ支払い可能で、匿名で行われており、親族や知人による提供は禁止されている。卵子ドナーは20-35歳、精子ドナーは18-40歳。国内のドナーは不足しておりスペイン、デンマーク、ギリシアなどから配偶子が輸入されている。胚提供は禁止されている。

 

出自を知る権利

子どもの出自を知る権利は認められていない。イタリア国内でもほとんど議論になっていない。

 

着床前診断

2015年より、着床前遺伝子診断(PGD)と着床前スクリーニング診断(PGS)が実施可能となった。

 

アクセス権

生殖補助医療へのアクセスは、異性愛カップル(婚姻・事実婚)にしか認められていない。

 

Link

Italian Fertility Tourism Observatory, Turismo Procreativo: La fuga continua. anche senza indicazione medica.2012.  Link

LUMSA大学(2018) 「WoMoGes (Women’s movements and gestational surrogacy) 」プロジェクト Link

 

文献

石原理・宇田川妙子 2016「生殖医療の法的規制のあり方-イタリアとフィンランドに注目して-」『平成27年度厚生労働省子ども・子育て支援推進調査研究事業諸外国の生殖補助医療における法規制の時代的変遷に関する研究』Link

宇田川妙子 2009「人の断片化か、新たな関係性か:イタリアの生殖技術論争の事例から」Kyoto Working Papers on Area Studies No.75.(G-COE Series 72)『生のつながりへの想像力2』京都大学東南アジア研究所21  Link

宇田川妙子 2016「イタリアの生殖補助医療の変遷:40号法とその後」『平成27年度厚生労働省子ども・子育て支援推進調査研究事業 諸外国の生殖補助医療における法規制の時代的変遷に関する研究』Link

Ahuja KK 2015 Patient pressure:Is the tide of cross-border reproductive care beginning to turn?Repod Biomed Online 30(5):447-50. Link

Paola Frati et al. 2015 Surrogate motherhood: Where Italy is now and where Europe is going. Can the genetic mother be considered the legal mother? Journal of Forensic and Legal Medicine 30: 4-8.  Link