Ukraine

国土

面積は60万3,700平方キロメートル。人口4,159万人(クリミアを除く)(2021年:ウクライナ国家統計局)。首都はキーウ。

 

メディカル・ツーリズム

ウクライナは歯科病院の技術が高く、治療費も安いことで有名であり、アメリカ、ヨーロッパ、ロシアからの歯科渡航治療が
「デンタル・ツーリズム」として知られている。またウクライナは、有償の卵子提供や代理出産が法的に認められている数少ない国の1つであり、生殖補助医療の分野での渡航者も多い。

 

法律

ウクライナでは、1990年に初めての体外受精が行われた。ARTに関する法律を持ち、代理出産や卵子提供などについても不妊治療の枠組みの中で正式に認めている。

●“The Family code of Ukraine”(123条)
・夫の同意を得た妻が、生殖補助医療により子供を出産した場合、その子供の父親は夫である。
・配偶者間で作成された受精卵が別の女性の子宮に移植された場合、生物学上の両親が法的な親として登録される。
・生殖補助医療技術により、夫の精子と別の女性の卵子で作成された受精卵が妻に移植され、子供が生まれた場合、夫婦が子供 の法的な親として登録される。

●“The Law of Ukraine” (ヘルスケアの基本原則48条)
・体外受精と胚移植は、保健省によって定められた条件と規則に従って実施される。実施には、医師の診断、女性が法定年齢に達していること、夫の同意を書面で得ていること、卵子ドナーの匿名、患者の治療記録の守秘が必要である。

●“Order 140/5 dated November 18th, 2003 Ministry of Justice of Ukraine”(2条2項)
・夫婦間で作成された受精卵を別の女性に移植した場合、生まれた子供の出生登録は、その胚移植に夫婦が同意していたことを 示す申立書に基づいて行われる。
この場合、出産した女性の同意書、およびその女性が出産したことを証明する医療文書も添 える。こうした手続きを踏めば、夫婦が法的な親として正式に登録される。

●“Civil Code of Ukraine”
・代理出産で生まれた子供の親は、遺伝的親である。つまり、依頼者は子供の親権を得るめたに何らの手続きをする必要がない(part2, 123条)
・法定年齢に達した女性、男性は共に、医師の忠告および法の定めた条件と規則に基づき、生殖補助医療を利用する権利を有する(281条)

●“Order 771 dated December 23rd, 2008 Ministry of Health of Ukraine”(生殖補助医療の利用に関する指示)
・生殖補助医療技術を使用する治療は、認可された優良医療施設のみで実施できる。
・患者は生殖補助医療技術を使用する治療を利用する際、医療施設を自由に選ぶことができる。
・生殖補助医療は、医師の忠告、および保健省の認可した書式に基づく患者の同意書や申込書に従って実施される。
・法定年齢に達した女性および/または男性は、Civil Code of Ukraine 281条に従い、信頼のおける医師の忠告の下で生殖補助 医療を利用する権利を有する。
・生殖補助医療技術を利用する医療行為は、ウクライナ法「ヘルスケアの基本原則」40条に従い、患者の治療記録の守秘義務が 守られる。
・配偶子または胚の提供とは、不妊治療の過程で、第三者の配偶子(卵子、精子)または胚を提供してもらい、使用することで ある。胚移植は医師の指示に基づき、法定年齢に達した女性に対し実施される。また、患者の同意書、ドナーの匿名性、患者 の治療記録の守秘が必要である。
・配偶子のドナーは、生まれてくる子供に対して一切の親権を持たない。

●No.787 dated September 9th, 2013 Ministry of Healthcare of Ukraine
医学的な理由がなければ代理出産を依頼できない。その条件は、a)子宮がない、b)子宮の変形、手術、良性腫瘍などの理由で
妊娠出産が難しい、c)子宮への着床を妨げるような形態学的外貌学的な変化、d)妊娠出産が生命の危険を及ぼすような深刻な病気、e)体外受精を4回以上やっても妊娠しない、習慣性流産
その他、次のような書類が必要である。a)患者の申請書、b)パスポートコピー、c)結婚証明書のコピー、d)公証された代理出産契約書

●Law of Ukraine Concerning Legal Status of Foreigner(3条)
・外国人でもウクライナ人と同様に生殖補助医療を受けることができる。

1983 Valentin Gryshchenkoがウクライナで初めての不妊治療クリニックを設立(Kharkiv City)
1991.03 ウクライナ初のIVF児がハリコフのCenter for Human Reproductionで誕生
1991 (現在の)ウクライナ(旧ソ連の区域)初の代理出産による妊娠が成功を収める(93年に子どもが誕生)
1992 “Fundamentals of Health Legislation of Ukraine”
1995 ハリコフ市で初の代理出産が成功(母親が娘の子どもを出産)
1995 卵巣のない女性が卵子提供により出産
1997 ウクライナ初のICSI児が誕生
2002 “Family Code of Ukraine”
2003 凍結融解胚を使用した子どもが誕生
2008 “厚生省令No. 771”
2009 67歳女性がキエフのInstitute for Reproductive Medicineにて出産
ベルギー人ゲイカップルがウクライナで代理出産したが、子供の帰国が許されず、孤児院に預けられる
2011 ウクライナで代理出産を依頼したフランス人カップルが、子供を隠して車で帰国しようとし、国境で捕まる
ウクライナで代理出産を依頼したアイルランド人カップルにパスポートが発行されず、帰国トラブルに
2011.03 外国人による代理出産の依頼を禁止する法案が Ekaterina Lukyanova 議員によって提出される
2011 Family Code of Ukraine139(2)が改正され、代理出産の依頼者は男女カップルであることが明記される
2012 66歳のスイス人女性がウクライナで治療を受け双子を出産
ウクライナで代理出産したドイツ人カップルにパスポートが発行されず、帰国トラブルに
1983 Valentin Gryshchenkoがウクライナで初めての不妊治療クリニックを設立(Kharkiv City)
1991.03 ウクライナ初のIVF児がハリコフのCenter for Human Reproductionで誕生
1991 (現在の)ウクライナ(旧ソ連の区域)初の代理出産による妊娠が成功を収める(93年に子どもが誕生)
1992 “Fundamentals of Health Legislation of Ukraine”
1995 ハリコフ市で初の代理出産が成功(母親が娘の子どもを出産)
1995 卵巣のない女性が卵子提供により出産
1997 ウクライナ初のICSI児が誕生
2002 “Family Code of Ukraine”
2003 凍結融解胚を使用した子どもが誕生
2008 “厚生省令No. 771”
2009 67歳女性がキエフのInstitute for Reproductive Medicineにて出産
ベルギー人ゲイカップルがウクライナで代理出産したが、子供の帰国が許されず、孤児院に預けられる
2011 ウクライナで代理出産を依頼したフランス人カップルが、子供を隠して車で帰国しようとし、国境で捕まる
ウクライナで代理出産を依頼したアイルランド人カップルにパスポートが発行されず、帰国トラブルに
2011.03 外国人による代理出産の依頼を禁止する法案が Ekaterina Lukyanova 議員によって提出される
2011 Family Code of Ukraine139(2)が改正され、代理出産の依頼者は男女カップルであることが明記される
2012 66歳のスイス人女性がウクライナで治療を受け双子を出産
ウクライナで代理出産したドイツ人カップルにパスポートが発行されず、帰国トラブルに
2012.10 生殖補助医療に関する規制法案(Draft Law No.8282)が最高議会の第一読会を通過

 

体外受精・統計

Center for Medical Statistics of the Ministry of Healthcare of Ukraineによれば、2013年 は16,110サイクルのARTが実施、1400サイクルか卵子提供、5455人の子供が生まれた。2013-4年の間、306サイクルの代理出産が実施された。

 

代理出産

商業的代理出産も含め合法。報酬の金額に上限はない。”The Family Code of Ukraine” の123条で、正式な代理出産契約で生まれた子供は、依頼者の子供とすることが定められている。厚生省の省令による代理母の条件は、20-35歳で心身ともに健康であること、健康な子供が少なくとも1人いること。正式な婚姻関係にある夫婦のみ、代理出産を依頼することができる。子供の出生届を出す際に、子供が代理出産で生まれた証明書と代理母の同意書を提出する。裁判所などの法的機関を通す必要はない。
2012年、外国人が代理出産を禁止する法案が出された。議会を通過したが、大統領の拒否権により施行されていない。

 

卵子提供

有償の卵子提供も含め合法。基本的に匿名。レシピエントの年齢に上限はない。2012年、66歳のスイス人女性がウクライナで卵子提供を受けて双子を出産したニュースが、世界中で議論を呼んだ。

ウクライナにおけるART治療サイクル数

2006 2007 2008 2009
総治療サイクル 5,361 4,899 7,454 8,077
うち卵子提供 338 345 553 704
ARTで生まれた子どもの人数 1,617 1,892 2,613 2,792
対象施設数 14 11 12 15

 

性選択

性選択は、法的に認められている。従って、医学的な理由がなくてもPGDで胚を診断して特定の性別の胚を子宮に戻すことは合法である。

 

宗教

ウクライナ正教会76.5%、ウクライナ東方カトリック教会8%、ウクライナ独立正教会7.2%、(西方典礼の)カトリック教会2.2%、プロテスタント2.2%、ユダヤ教 0.6%、その他3.2%

 

社会的問題

代理出産児がしばしば帰国トラブルに巻き込まれている。Ukrainian Association of Reproductive Medicine(UARM)はこの状況を憂慮し、母国で代理出産を禁じている場合はやめること、少なくとも夫婦どちらかの配偶子を使うことなどを忠告している。

 

トラブル

トラブル事例

依頼親の国籍 出来事
2007 アメリカ アメリカ人カップルJeanette Runyon and Michael WoolslayerがキエフのIsida Clinicで代理出産契約を結び、2007年に子が誕生。提供卵子と提供精子が使われたため、米国領事館は子の出生証明書を認めなかった。ウクライナ警察に人身売買を疑われ、依頼親はウクライナ警察に拘束された。依頼親は2009年にアメリカに帰国。2010年、依頼親の名前は子どもの出生証明書から削除され、子どもVictoriaはウクライナ人の夫婦が育てることになった。
2007 ウクライナ 2007年、娘のために代理母になった女性が、依頼男性に対しておこした裁判で、男性に養育費の支払いが命じられた。このケースでは、娘の卵子と、娘のパートナーの精子を用いたが、正式には結婚していなかった。
2008 ベルギー ウクライナで代理出産を依頼し、2008年11月に息子Samuelを得たベルギーのゲイカップルPeter Meurrens & Laurent
Ghilainが、車に男児を隠して国境を渡ろうとし、失敗。子どもはウクライナの孤児院に預けられ、2011年2月にようやくこのカップルによって引き取られた。子どもは既に2歳になっていた。
2008 イギリス イギリス人カップルがウクライナの代理出産で双子を得たが、イギリス政府はカップルを子どもの親とは認めず、子どもが無国籍状態に陥った。イギリスが認めていない有償代理出産契約を無効とするかどうかが争点となった。Hedley判事は子どもの福祉の観点から、カップルに親権を認める判決を出した。
2010 イタリア イタリア人カップルがウクライナで代理出産を依頼し、2010年11月に子どもが未熟児の状態で生まれた。しかしエージェンシーと代理母が金銭面での合意に至っていなかったことが判明した。代理母は子どもの引渡しを拒否し、代理母夫婦の子どもとして出生登録した。
2010 カナダ ウクライナを祖先にもつカナダ人カップルがウクライナで代理出産を依頼し、2010年に子供が誕生。カナダ側が子供の入国を許可しなかった。子供の親権と入国のためには、裁判所の手続きが必要であるというものであった。カップルはウクライナの裁判所に訴えた。裁判所は養子手続きの書式にならい、許可を出した。
2011 フランス ウクライナで代理出産を依頼して双子を得たフランス人カップルPatrice and Orellieが、車のマットレスの下に子どもを隠してウクライナからハンガリーへの国境を渡ろうと試みた。しかし、ウクライナから出国する際に国境警備員に見つかり、双子は依頼親と離されフランスに帰国できないトラブルが生じた。
依頼親は、1500ユーロの罰金を支払い、釈放された。
2011 アイルランド ウクライナで代理出産を依頼したアイルランド人カップルの子どもに、パスポートが発行されず、帰国トラブルに。出生証明書にはアイルランド人カップルの名前が記載されているため、ウクライナも子どもの市民権を認めず、無国籍状態に陥った女児はウクライナの孤児院に預けられた。

 

Link

Сімейний кодекс України
Family Code of Ukraine Link

НАКАЗ № 771 Про затвердження Інструкції про застосування допоміжних технологій
‘Instruction on Procedures for Assisted Reproductive Technologies’, Order of the Ministry of Health No. 771 of 12/23/2008 Link

Основи законодавства України про охорону здоров’я
“Fundamentals of Health Legislation of Ukraine” Link

ウクライナの生殖補助医療 ~Covid-19の前と後~(Prof.Mykola Gryshchenko)Link

ロシアの代理出産と中国人患者 Gestational Surrogacy and Chinese Cross-Border Patients in Russia (2021) Link

ウクライナにおける 卵子ドナーのマーケット Egg donor market in Ukraine. (2021) Link

ロシアとウクライナの代理出産 (anonymous informant) Link

 

文献

Alya Guseva 2020 Scandals, Morality Wars. and the Field of Reproductive Surrogacy in Ukraine. economic sociology_the European electronic newsletter 21(3). Link

Gennadity Druzenko 2013 Ukraine. Katarina Trimmings and Paul Beaumont (ed). International Surrogacy Arrangements.Oxford and Portland, Oregon.  Link

Oleg M. Reznik, Yuliia M. Yakushchenko. 2020 Legal considerations surrounding surrogacy in Ukraine. Wiad Lek. 73(5); 1048-52. Link

Polina Vlasenko 2013 Biopower and Precarity: Meeting Embodied Self in the Discourses of ART in Ukraine. Link

Polina Vlasenko 2014 Governing through precarity: The experience of infertile bodies in IVF treatment in Ukraine. The Journal of Social Policy Studies 12 (3):441-454. Link

Polina Vlasenko 2015 Desirable bodies:Precarious laborers- Ukrainian egg donors in context of transnational fertility. (In)fertile Citizens(IV):197-216. Link

Polina Vlasenko 2017 From Precarity to Self-Governance: Performing Motherhood through IVF Treatment in Ukraine. Merete Lie, Nina Lykke, Assisted Reproduction Across Borders.  Link

Svetlana M Sylkina et al. 2019 Surrogacy: An international comparative analysis of the fundamental legislative principle of Ukraine. Medicine, Science and the Law.60(1):37-44.  Link

Veerle Bonestroo 2019 A Lively Business: Inequalities, Vulnerabilities & Responsibilities in the Ukrainian Surrogacy Market Link

Wiadomości Lekarskie Medical Advances.(Official journal of the Polish Medical Association) Link