Commercialization of Assisted Reproduction and Reproductive Tourism in the Globalized World: Ethical, Legal and Social Issues.

Malaysia

メディカル・ツーリズム

マレーシアの保健省は、外国からの医療ツーリストをさらに増やすための活動を東南アジアで展開している。医療ツーリズム産業を経済発展のカギとし、メディカル・ツーリズムのウェブサイトを立ち上げ、2010年には医療広告規制を緩和するなど、政府が先導して海外への情報発信を行っている。保健省によると、2010年に渡航治療でマレーシアを訪れた外国人は400,000人で、1億165万ドルの収益を国にもたらした。保健省が実施した医療ツーリズム促進プログラムが成果を上げていることを物語っている。患者の内訳は、インドネシア65-70%、シンガポール12%、日本5-6%、ヨーロッパ5%、インド3%(2008年のデータ)。近年は特にアラブ首長国連邦、カタール、サウジアラビアなど中東諸国の患者が増加している。不妊治療センターを持つ外国人向けの大病院も多い。

ガイドライン・法案

マレーシアには、ARTに関するガイドラインを医師会が出しており、医師はこのガイドラインに従うとされるが、法的拘束力はない。保健省は現在、生殖補助医療の法律化に着手し、法案"Assisted Reproductive Technique Services Act"を作成した。2012年までには立法化されると見込まれている。この法案では代理出産、精子・卵子バンク、精子提供などの問題も取り上げられ、協議段階に入っている。

マレーシアの生殖補助医療 関連年表
  出来事
  1987   マレーシア初の体外受精児の誕生
  1995   マレーシア初のIVF型代理出産児の誕生が報告される
  1996   マレーシア初の顕微授精(ICSI)児の誕生
  1998   マレーシア初代理出産懐児の事例が報道される
  2006   Malaysian Medical Council(MMC:医学評議会)からガイドライン“MMC Guideline 003/2006, Assisted Reproduction”(代理出産禁止・有償配偶子提供の禁止)
  2008   全国イスラム宗教評議会から代理出産を禁止するファトワが発令
  2011   保健省が生殖補助医療法案に着手

 

代理出産

マレーシアでは代理出産が増加していると報告されているが、それを取り締まる法律はない。医師会のガイドライン12条には「代理出産契約とは、女性が他人のために子供を妊娠し、出産時に引き渡すことに同意することである。こうした行為は我が国の主な宗教のほとんどにとって受け入れがたいものである。またこのような代理懐胎には、関係者にとって、多くの法的ジレン マが伴う可能性をはらんでいる。」とある。しかし法律上、代理出産に関する民事法の項目はなく、代理出産の法的状況は曖昧である。法律は代理出産を想定しておらず、Section 87 of the law reform (marriage and divorce) act of 1976によれば、結婚している女性が産んだ子供は夫婦の子どもである。もし女性が結婚していない場合は、子どもは非嫡出子となる。生んだ女性が「母」となる原則に基づいているので、こうした契約が複雑な問題になる可能性がある。生みの母の同意を得て養子にすることもできる。偽の登録をすれば、刑法466条により、最高7年の懲役、または罰金が課される。
 ムスリムが多数派を占めるマレーシアで代理出産が増えつつあるという報告を受け、マレーシアのIslamic affairs department(イスラム宗教局)が、イスラム教は代理出産を禁じるというファトワーを2011年に出した。宗教局は風紀警察のような役割を果たしており、宗教に違反したイスラム教徒を罰する権限を持っている。

卵子提供

マレーシアではガイドラインの影響により代理出産を行う病院は少ないが、卵子提供を行う病院は多い。価格は卵子提供とIVF/ICSI費用を合わせて約RM20,000-RM30,000 (1リンギット≒28円)。外国からは、アラブやオーストラリア、モルディブ、ベトナム、ミャンマーなどの患者が多い。しかしイスラム教徒は第三者が関わるARTの使用に慎重で、夫の精子と妻の卵子を使い、妻が出産するのが原則とされている

マレーシア不妊治療結果2001‐2003年
Type/
Year
Andrology
service
Number of
infertility cases
Cases under assisted conception OthersTotal pregnancy
IUI GIFT IVF ICSI
New Follow up New Follow up Number of
cases
Successful pregnancy Number of
cases
Successful pregnancy Number of
cases
Successful pregnancy Number of
cases
Successful pregnancy
2001 28 51 697 9,409 1,172 59 107 5 47 61 125
2002 49 49 891 8,851 1,186 71 1 45 10 47 71 152
2003 37 32 993 6,928 716 48 46 2 10 55 105
Total 114 132 2,581 25,188 3,074 178 1 198 17 104 187 382

PGD(着床前遺伝子診断)

2006年、医師会はマレーシア国内でPGDを行うクリニックが増えてきたことを受け、遺伝疾患を排除する目的以外でのPGDの使用をガイドラインで禁止した。以前は隣国シンガポールのカップルによるPGDの需要が非常に多かった。

宗教

イスラム教徒60.4%、仏教徒19.2%、キリスト教徒9.1%、ヒンドゥー教徒6.3%、儒教・道教などの中華系の宗教2.6%(2000年)

社会

マレーシアは複合民族国家である。マレー人が60%以上、中国系が約25%を占め、そのほかインド=パキスタン系、先住民がいる。マレー人とパキスタン系はイスラム教、インド系はヒンドゥー教、中国系は仏教や道教と、宗教も民族によって違う。人種別に一人当たりの GDPも違い、民族間の格差が存在する。国の法律も、イスラム教徒に適用されるイスラム法と、それ以外の国民に適用される民法の、2重システムになっている。文化的に早婚なマレー人女性に対し、中国系の女性は高等教育を受ける率が高く初婚年齢も高い。マレーシア社会は急激な発展を遂げ、その結果、家族構成や女性教育なども大きく変わった。女性の晩婚化とライフスタイルの変化に伴い出生率は低下、2009年には2.6人となる。不妊問題が社会的関心事となり、公的機関National Population and Family Development Board (NPFDB)や非営利団体Tunku Azizah Fertility Foundation (TAFF)などが不妊夫婦を支援している。

メディア

マレーシアの代理出産を有名にしたのが、映画『ザ・タイガー・ファクトリー』である。2009年末にマレーシアで実際に起こった、代理母出産業の元締めが逮捕されるという事件をベースに作成された。代理母出産は15万円、見た目が悪いと5万円値引きという衝撃の事実を映画化したもので、代理母女性が貧民層出身で、犯罪組織による誘拐や児童売買による違法な仲介が絡むなど、代理母産業には、人身売買などの人権問題が生じうることを示唆した。

日本からの渡航治療

どのくらいの日本人が不妊治療を求めてマレーシアへ渡航しているのかについて、正確な統計はとれていない。マレーシアでの卵子提供や代理出産プログラムを日本人向けに仲介する業者がホームページを開設し、営業を行っている。 クアラルンプールのある大病院へ問い合わせたところ、これまでに約25組の日本人夫婦が卵子提供の治療を求めてやってきたという。他の病院にもアンケート調査を行ったが、日本人の不妊治療に関しては無回答が多かった。 インターネット上の不妊相談などの書き込みを見る限り、卵子提供を求めて渡航する日本人が多いものと思われる。

Link

Guideline of the Malaysian Medical Council Assisted Reproduction.   Link blank

Standards for Assisted Reproductive Technology Facility-Embryology Laboratory and Operation Theatre.  Link blank

参考文献

Bioyechnology in Malaysia-an industrial perspective. Asia-Pacific Biotech News 11, 483 (2007).  Link blank

Goh Siu Lin 2015 The potential risks of surrogacy arrangements in Malaysia.Link blank

Majdah Zawawi. Third party involvement in the reproductive process:comparative aspects of the legal and ethical approached to surrogacy.Link blank

Ahmad N. 2011 An international view of surgically assisted conception and surrogacy tourism.Med Leg J.79:135-45.




(2017/02/22 last updated)
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