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生殖ツーリズムがもたらす倫理的・法的・社会的問題

生殖技術がグローバルに市場化されることにより、国境を越えた生殖ツーリズム現象を生みだしている。卵子提供や代理出産が容易であり安価で利用できる国々へと先進国の人々が訪れ治療を受けている。規制格差や経済格差を利用した生殖ツーリズム現象は、第三世界の社会的経済的弱者の搾取を生んでいる。生殖補助医療のなかの構造的弱者(女性・子ども)の権利擁護や保護の観点から、生殖ツーリズムのポリティクスと問題点を抽出し、技術をめぐる政策や倫理を考える。

 

研究費:

2010-2013 内閣府(最先端・次世代研究開発支援プログラム)「グローバル化による生殖技術の市場化と生殖ツーリズム:倫理的・法的・社会的問題」(補助事業者 日比野由利)

人工妊娠中絶と女性のケア

 人工妊娠中絶は日本では、年間28万件程度行われており、女性が少なからず経験する外科手術である。手術そのものは安全に行われているが、女性(男性)へのケアが不足しがちである。日本では、中絶を経験した女性が、水子供養に癒しを求めることもめずらしくない。海外の研究でも、中絶後の女性に抑うつや不安などの心理的問題が生じていることが報告されている。日本の中絶医療の実態調査を通して、中絶のケアが必要であることを啓発するとともに、海外での取り組みを検討することによって、新しい中絶ケアを開発し普及させることを目的として研究を行っている。

 

研究費:

2009-2010年 文部科学省(若手研究 スタートアップ)「中絶ケアに関する看護教育の実態および教育モデルの考案―海外との比較検討から」(代表 水野真希)

先端医学と女性身体の資源化

 先端的な研究や治療において、女性の身体が利用されている。不妊治療では、卵子提供や代理出産など、他者の身体を巻き込んだ治療がますます進められ、再生医学研究では、卵子(胚)や中絶胎児が実験材料となっている。先端医学の進展に伴い、ますます多くの女性たちが自己身体(の一部)を他者の欲望の実現のため明け渡す行為へと促されていく可能性がある。先端医学においては、医療者やレシピエント、国家や産業の利益が優先されがちであり、資源化・商品化に対する女性保護の方策を検討することが必要である。

 

研究費:

2010-2012年 文部科学省(若手研究B)「資源としての女性-卵子・代理母・中絶胎児-」(代表 日比野由利)

2007-2009年 文部科学省(若手研究B)「女性由来組織をめぐるポリティクスとジェンダー-女性の痛みとリスクに焦点をあてて-」(代表 日比野由利)

性のピアエデュケーションによる若年者への予防啓発効果の評価と新たな行動変容モデルの構築

 日本社会では、大人向けの性情報が氾濫しており、その規制は十分ではない。過剰な性情報にさらされている若年者に対して純潔教育のみではもはや実効性がない。性行為に伴うリスクを正しく知り、安易な性行為を控え、性行為に及ぶ際には、自他の身を守る対処法を確実に履行する必要がある。多様な性の自己決定を促すため、高校生に対する性教育の効果を評価し、予防啓発に向けて、よりよい教育実践を開発し、性に関する行動変容の理論モデルを洗練させることを目的として、介入研究を行っている。
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