Ukraine
メディカル・ツーリズム
ウクライナは歯科病院の技術が高く、治療費も安いことで有名であり、アメリカ、ヨーロッパ、ロシアからの歯科渡航治療が 「デンタル・ツーリズム」として知られている。またウクライナは、有償の卵子提供や代理出産が法的に認められている数少ない国の1つであり、生殖補助医療の分野での渡航者も多い。
法律
ウクライナでは、1990年に初めての体外受精が行われた。ARTに関する法律を持ち、代理出産や卵子提供などについても不妊治療の枠組みの中で正式に認めている。
●"The Family code of Ukraine"(123条)
・夫の同意を得た妻が、生殖補助医療により子供を出産した場合、その子供の父親は夫である。
・配偶者間で作成された受精卵が別の女性の子宮に移植された場合、生物学上の両親が法的な親として登録される。
・生殖補助医療技術により、夫の精子と別の女性の卵子で作成された受精卵が妻に移植され、子供が生まれた場合、夫婦が子供 の法的な親として登録される。
●"The Law of Ukraine" (ヘルスケアの基本原則48条)
・体外受精と胚移植は、保健省によって定められた条件と規則に従って実施される。実施には、医師の診断、女性が法定年齢に達していること、
夫の同意を書面で得ていること、卵子ドナーの匿名、患者の治療記録の守秘が必要である。
●"Order 140/5 dated November 18th, 2003 Ministry of Justice of Ukraine"(2条2項)
・夫婦間で作成された受精卵を別の女性に移植した場合、生まれた子供の出生登録は、その胚移植に夫婦が同意していたことを 示す申立書に基づいて行われる。
この場合、出産した女性の同意書、およびその女性が出産したことを証明する医療文書も添 える。こうした手続きを踏めば、夫婦が法的な親として正式に登録される。
●"Civil Code of Ukraine"
・代理出産で生まれた子供の親は、遺伝的親である。つまり、依頼者は子供の親権を得るめたに何らの手続きをする必要がない(part2, 123条)
・法定年齢に達した女性、男性は共に、医師の忠告および法の定めた条件と規則に基づき、生殖補助医療を利用する権利を有する(281条)
●"Order 771 dated December 23rd, 2008 Ministry of Health of Ukraine"(生殖補助医療の利用に関する指示)
・生殖補助医療技術を使用する治療は、認可された優良医療施設のみで実施できる。
・患者は生殖補助医療技術を使用する治療を利用する際、医療施設を自由に選ぶことができる。
・生殖補助医療は、医師の忠告、および保健省の認可した書式に基づく患者の同意書や申込書に従って実施される。
・法定年齢に達した女性および/または男性は、Civil Code of Ukraine 281条に従い、信頼のおける医師の忠告の下で生殖補助 医療を利用する権利を有する。
・生殖補助医療技術を利用する医療行為は、ウクライナ法「ヘルスケアの基本原則」40条に従い、患者の治療記録の守秘義務が 守られる。
・配偶子または胚の提供とは、不妊治療の過程で、第三者の配偶子(卵子、精子)または胚を提供してもらい、使用することで ある。胚移植は医師の指示に基づき、法定年齢に達した女性に対し実施される。また、患者の同意書、ドナーの匿名性、患者 の治療記録の守秘が必要である。
・配偶子のドナーは、生まれてくる子供に対して一切の親権を持たない。
●No.787 dated September 9th, 2013 Ministry of Healthcare of Ukraine
医学的な理由がなければ代理出産を依頼できない。その条件は、a)子宮がない、b)子宮の変形、手術、良性腫瘍などの理由で
妊娠出産が難しい、c)子宮への着床を妨げるような形態学的外貌学的な変化、d)妊娠出産が生命の危険を及ぼすような深刻な病気、e)体外受精を4回以上やっても妊娠しない、習慣性流産
その他、次のような書類が必要である。a)患者の申請書、b)パスポートコピー、c)結婚証明書のコピー、d)公証された代理出産契約書
●Law of Ukraine Concerning Legal Status of Foreigner(3条)
・外国人でもウクライナ人と同様に生殖補助医療を受けることができる。
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体外受精・統計
Center for Medical Statistics of the Ministry of Healthcare of Ukraineによれば、2013年 は16,110サイクルのARTが実施、1400サイクルか卵子提供、5455人の子供が生まれた。2013-4年の間、306サイクルの代理出産が実施された。
代理出産
商業的代理出産も含め合法。報酬の金額に上限はない。"The Family Code of Ukraine" の123条で、正式な代理出産契約で生まれた子供は、依頼者の子供とすることが定められている。厚生省の省令による代理母の条件は、20-35歳で心身ともに健康であること、健康な子供が少なくとも1人いること。正式な婚姻関係にある夫婦のみ、代理出産を依頼することができる。子供の出生届を出す際に、子供が代理出産で生まれた証明書と代理母の同意書を提出する。裁判所などの法的機関を通す必要はない。
2012年、外国人が代理出産を禁止する法案が出された。議会を通過したが、大統領の拒否権により施行されていない。
卵子提供
有償の卵子提供も含め合法。基本的に匿名。レシピエントの年齢に上限はない。2012年、66歳のスイス人女性がウクライナで卵子提供を受けて双子を出産したニュースが、世界中で議論を呼んだ。
2006 | 2007 | 2008 | 2009 | |
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総治療サイクル | 5,361 | 4,899 | 7,454 | 8,077 |
うち卵子提供 | 338 | 345 | 553 | 704 |
ARTで生まれた子どもの人数 | 1,617 | 1,892 | 2,613 | 2,792 |
対象施設数 | 14 | 11 | 12 | 15 |
性選択
性選択は、法的に認められている。従って、医学的な理由がなくてもPGDで胚を診断して特定の性別の胚を子宮に戻すことは合法である。
宗教
ウクライナ正教会76.5%、ウクライナ東方カトリック教会8%、ウクライナ独立正教会7.2%、(西方典礼の)カトリック教会2.2%、プロテスタント2.2%、ユダヤ教 0.6%、その他3.2%
社会的問題
代理出産児がしばしば帰国トラブルに巻き込まれている。Ukrainian Association of Reproductive Medicine(UARM)はこの状況を憂慮し、母国で代理出産を禁じている場合はやめること、少なくとも夫婦どちらかの配偶子を使うことなどを忠告している。
トラブル
年 | 依頼親の国籍 | 出来事 |
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2007 |
アメリカ | アメリカ人カップルJeanette Runyon and Michael WoolslayerがキエフのIsida Clinicで代理出産契約を結び、2007年に子が誕生。提供卵子と提供精子が使われたため、米国領事館は子の出生証明書を認めなかった。ウクライナ警察に人身売買を疑われ、依頼親はウクライナ警察に拘束された。依頼親は2009年にアメリカに帰国。2010年、依頼親の名前は子どもの出生証明書から削除され、子どもVictoriaはウクライナ人の夫婦が育てることになった。 |
2007 |
ウクライナ | 2007年、娘のために代理母になった女性が、依頼男性に対しておこした裁判で、男性に養育費の支払いが命じられた。このケースでは、娘の卵子と、娘のパートナーの精子を用いたが、正式には結婚していなかった。 |
2008 |
ベルギー | ウクライナで代理出産を依頼し、2008年11月に息子Samuelを得たベルギーのゲイカップルPeter Meurrens & Laurent Ghilainが、車に男児を隠して国境を渡ろうとし、失敗。子どもはウクライナの孤児院に預けられ、2011年2月にようやくこのカップルによって引き取られた。子どもは既に2歳になっていた。 |
2008 |
イギリス | イギリス人カップルがウクライナの代理出産で双子を得たが、イギリス政府はカップルを子どもの親とは認めず、子どもが無国籍状態に陥った。イギリスが認めていない有償代理出産契約を無効とするかどうかが争点となった。Hedley判事は子どもの福祉の観点から、カップルに親権を認める判決を出した。 |
2010 |
イタリア | イタリア人カップルがウクライナで代理出産を依頼し、2010年11月に子どもが未熟児の状態で生まれた。しかしエージェンシーと代理母が金銭面での合意に至っていなかったことが判明した。代理母は子どもの引渡しを拒否し、代理母夫婦の子どもとして出生登録した。 |
2010 |
カナダ | ウクライナを祖先にもつカナダ人カップルがウクライナで代理出産を依頼し、2010年に子供が誕生。カナダ側が子供の入国を許可しなかった。子供の親権と入国のためには、裁判所の手続きが必要であるというものであった。カップルはウクライナの裁判所に訴えた。裁判所は養子手続きの書式にならい、許可を出した。 |
2011 |
フランス | ウクライナで代理出産を依頼して双子を得たフランス人カップルPatrice and Orellieが、車のマットレスの下に子どもを隠してウクライナからハンガリーへの国境を渡ろうと試みた。しかし、ウクライナから出国する際に国境警備員に見つかり、双子は依頼親と離されフランスに帰国できないトラブルが生じた。 依頼親は、1500ユーロの罰金を支払い、釈放された。 |
2011 |
アイルランド | ウクライナで代理出産を依頼したアイルランド人カップルの子どもに、パスポートが発行されず、帰国トラブルに。出生証明書にはアイルランド人カップルの名前が記載されているため、ウクライナも子どもの市民権を認めず、無国籍状態に陥った女児はウクライナの孤児院に預けられた。 |
Link
Сімейний кодекс України
Family Code of Ukraine
НАКАЗ № 771 Про затвердження Інструкції про застосування допоміжних технологій
‘Instruction on Procedures for Assisted Reproductive Technologies’, Order of the Ministry of Health No. 771 of 12/23/2008
Основи законодавства України про охорону здоров'я
"Fundamentals of Health Legislation of Ukraine"
文献
Gennadity Druzenko 2013 Ukraine. Katarina Trimmings and Paul Beaumont (ed).International Surrogacy Arrangements.Oxford and Portland, Oregon.
(2018/08/29 last updated)