Commercialization of Assisted Reproduction and Reproductive Tourism in the Globalized World: Ethical, Legal and Social Issues.

Australia

国土

 日本の21倍にあたる国土に人口約2030万人が居住している国である。ヨーロッパ系96%(イギリス系77%)、アジア系2%、先住民アボリジニ(混血0.9%)という民族から構成されている。州構成は、南オーストラリア州、西オーストラリア州、クイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、ヴィクトリア州、タスマニア州、オーストラリア州首特別区、北部準州、特別地域からなる。各州が大きな権限を持っている。




宗教

 キリスト教が約64%、非キリスト教が約5%、無宗教が18.7%、その他が約13%



年表

 
オーストラリアの生殖補助医療 関連年表
  出来事
  60年代   非配偶者間人工授精が行われ始める
  1973   体外受精による世界初の妊娠に成功 (ビクトリア州)
  1976   The Royal Women's Hospital in Melbourneで精子提供プログラムが始まる
  1979   体外受精の初成功(1980年出産 世界で3番目)
  1983   卵子提供による世界初の妊娠成功(Monash IVF)
  1984   ウォーラー報告 (ビクトリア州)
  1984   不妊法 Infertilty (Medical Procedure) Act (ビクトリア州)(1988年7月1日より施行)
  1995   不妊治療法 Infertiliy Treatment Act (ビクトリア州)(1998年1月1日より施行)
  2002   連邦法成立 (胚研究法、人クローン禁止法)
  2003   生殖補助技術法 (ニューサウスウェールズ州)
  2006   "Time to Tell" campaign (2009年まで)
  2010  1 配偶子提供で生まれた事実について、出生証明書の追加記載(addundum)を通して子どもに開示がなされる(ビクトリア州)
  2012   Law Reform Committeeから、全ての子どもにドナー情報へのアクセス権を認めるべきとの勧告
  2017  3 過去の全てのドナー情報が例外なく公開される(ビクトリア州)

体外受精

 オーストラリア全州で約70のクリニックが存在する。体外受精のほとんどが認可された施設で行われてるがDIは私立病院で行われることもある。2007年では52,000サイクルの体外受精が行われ、10,000人以上の子どもが誕生している。全出生の3.1%にあたる。卵子・胚提供のサイクルはこのうち1,800サイクルで300人の子どもが誕生している。約2,200がDIサイクルであり、250人の子どもが誕生している。代理出産は52サイクル行われ、7人の子どもが誕生している。ドナーサイクルは7.5%にのぼる。その他、様々な形で行われ、数字に現れていないDIもある。


代理出産

商業的
代理出産
利他的
代理出産
gestational surrogacy traditional surrogacy 海外
代理出産
依頼者 法律
ニューサウスウェールズ州 × × カップル、
独身者、
同性愛者の
独身者またはカップル
New South Wales Surrogacy
Act 2010Link
 blank
ビクトリア州 × × カップル、
独身女性
Assisted Reproductive Treatment
Act 2008Link blank
クイーンズランド州 × × カップル、
独身者、
同性愛者の
独身者またはカップル
Queensland Surrogacy
Act 2010Link blank
西オーストラリア州 × カップル、
独身女性
Surrogacy
Act 2008Link blank
南オーストラリア州 × 結婚しているカップル、
3年以上事実婚のカップル
Statutes Amendment
(Surrogacy)
Act 2009Link blank
タスマニア州 × カップル、
独身者、
同性愛者の
独身者またはカップル
Tasmanan Sarrogacy
Act 2012Link blank
ノーザンテリトリー(北部準州) 規定なし なし
オーストラリア州首都特別区 × × × カップル Parentage
Act 2004Link blank
 北部準州を除き、商業的代理出産は明確に禁止されている。利他的代理出産が許容されている国と、代理出産を全面禁止している国もある(クイーンズランド州)。ニューサウスウェールズ州、クイーンズランド州、オーストラリア州首都特別区では、海外での代理出産の利用は禁止されている。ビクトリア州では、2008年法により代理出産契約がPatient Review Panelの許可を受けることを条件として、代理出産が認められた。



生殖ツーリズム

 海外で商業的代理出産を利用するオーストラリア人は年々増加している。国内ではゲイカップルの代理出産の依頼は認められておらず、多くのゲイカップルが海外代理出産を利用している。オーストラリア人によるタイでの市民件申請件数は、2008年から2012年の間に297件から459件、インドでは126件から 519件、ウクライナでは9件から20件に増加している。在外領事館では代理出産で生まれた子どもに市民権を与える方法についてのガイダンスも掲示されており、海外代理出産の禁止は無実化している。


精子提供

 1988年以前の記録はなく、実施数は不明である。Monash IVF Centerによれば、1988年までの間に、精子提供による848件の出産が記録されている(多胎を含む)。1988年までにMonash IVF Centerで精子を提供したのは422人未満と考えられる。これまでのオーストラリアで精子提供によって3万7千人もの子どもが生まれているとされる。  



出自を知る権利

  ドナー情報へのアクセス(子ども) 配偶子提供を
受けられる人
ドナー/両親による
アクセス
記録の保管 根拠法
1988年7月1日
以前
この時期に配偶子を提供したドナーから生まれた子どもは、ドナー情報にアクセスする権利がない 規定なし   2001年にVoluntary Registerが設立  
1988年7月1日~1997年12月31日 1988年1月1日以降に配偶子を提供したドナーから7月1日以降に生まれた18歳以上の子どもは、個人を特定しない情報を得ることができ、またドナーの同意のもとでドナーの個人情報を得ることかできる。 医学的に不妊と診断された婚姻カップル   1998年にCentral Registerが設立 Infertility (Medical Procedure) Act 1984
1998年1月1日~2009年12月31日 この時期に配偶子提供に同意または提供したドナーから生まれた18歳以上の子どもは、ドナーの同意を必要とすることなくドナーの個人情報を知ることができる。 婚姻カップルと事実婚カップル     Infertility Treatment Act 1995
2010年1月1日
以降
配偶子提供で産まれた子どもの出生証明書には子ども自身が申請した場合のみ"addendum"と記され、さらに詳しい情報を請求すると"donor conceived"と記されている。出生証明書の申請は、16歳以上の 子どもが行うことができる。 性的志向、人種、宗教で差別することは禁止され、すべての人にアクセスが認められる。(犯罪歴と児童虐待のチェックが必要)     Assisted Reproductive Treatment Act 2008
2015年6月29日 1988年以前の匿名時代の提供によって生まれた子どもは、ドナーの個人を特定しない情報にアクセスすることができる。また、ドナーの同意を得れば、ドナーの個人を特定する情報にアクセスすることができるようになった。これに伴い、1988年以前の情報の提供が各施設に求められる。       Assisted Reproductive Treatment Further Amendment Act 2014

 1984年、18歳以上の子どもに対し、提供者の同意を前提とした情報の開示が認められる。ドナー情報はCentral Resisterに登録される。1995年、提供者の同意がない場合でも、18歳以上の子どもが知る権利を選択した場合は、情報の開示が行われる(提供する際、情報の開示についても同意しているため)。2008年法では、子どもの年齢制限が廃止された。精子・卵子・胚によって生まれた子どもの出生登録には'donor conceived'と記載されることになった。1995年以前の提供については、自発的な情報交換の場が設置されている(以上ヴィクトリア州)。

 ビクトリア州、サウスオーストラリア州、西オーストラリア州、ニューサウスウェールズ州では出自を知る権利が規定されている。 
 南オーストラリアでは出自を知る権利は認められておらず、ドナー情報の管理体制も存在しないため、クリニックに直接問い合わせるしかない。
 National Health and Medical Research Council (NHMRC)のガイドラインによって、子どもはドナーのアイデンティティを知る資格があるとされているが、その他の州では出自を知る権利は実現していない。


養子縁組

 養子の場合の出自を知る権利、すなわち生みの親の個人情報の開示は、18歳以上に認められている(8州)。
 Adoption Act 1984により、養子の生みの親は、養子の許可なく、成人した子どもについての個人を特定する情報を得ることができる。養子は、生みの親からのコンタクトの方法について決めることができる(ビクトリア州)。

同性愛者のアクセス権

 同性婚は認められていない。1995年法においては、独身女性、レズビアン女性の生殖補助医療へのアクセス件は認められていなかったが、2008年法で認められた。パートナー女性にも親としての法的地位を認め、精子ドナーは法的親としての資格を持たない(ヴィクトリア州)。

「公的給付」

 生殖補助医療は、メディケア(national universal taxpayer-funded medicare)とPBS(pharmaceutical benefit schemes)により給付がなされている。

  

法律・ガイドライン

Infertility (Medical Procedure)Act 1984 Link blank

Infertility Treatment Act 1995 Link blank

Assisted Rrpeoducutive Treatment Act 2008 Link blank

Ethical Guidelines on the use of assisted reproductive technology in clinical practice and research Link blank


Link

Victorian Assisted Reproductive Treatment Authority (VARTA) Link blank

Dr.Sonia Allan へのインタビュー Link blank



Report

Law Reform Committe 2012 Inquiry into Access by Donor-Conceived People to Information about Donors. Link blank

Victorian Assisted Reproductive Treatment Authority in collaboration with Monash University. Report to the Victoran Government. May 2013. Consulatation with donors who donated gatemes in Victoria before 1998:access by donor-conceived prople to information about donors .

Infertility Treatment Authority Annual Report Link blank  

Family Law Council 2013 Report on Parentage and the Family Law Act Link blank  

Assisted Reproductive Technology and Adoption Link blank



(2016/03/24 last updated)
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